New York City's Guardian Devil【Daredevil: Woman Without Fear】

ルパン三世と峰不二子。バットマンとキャットウーマン。スパイダーマンとブラックキャット。"愛"という簡単な言葉では片づけられない、複雑な関係を持った男女コンビ
マーベルヒーローの一角、マット・マードックとエレクトラ・ナチオスも、こういった相関にあると言って良いでしょう。【Devil's Reign】タイイン、【Daredevil: Woman Without Fear】の主役を務めるのは後者。

時に女性としてマットを愛し、時に暗殺者としてマットの命を狙い、そして今ではもう一人のデアデビルとしてマット・マードックを支える。歴史のあるキャラクターとはいえ、属性特盛な赤き女ハンター。
恐れを知らぬ男と犯罪王の決戦の舞台に選ばれたニューヨークにおいて、彼女の抱える心情も、決して一言で言い表せるものではありませんでした
DDWWF- (2)米国の中心、ニューヨークシティの新たな守護者。
必殺の技術と、不殺の意志。相反する武器が彼女を強くし、悩ませる。



<あらすじ>
何度も何度も自分を欺き続けて来たデアデビル/マット・マードックを倒すため、キングピン/ウィルソン・フィスクは一大決戦を挑む。彼の壮大な計画に、真っ向勝負ではなく、暗殺で挑んだのは、第二のデアデビル/エレクトラ・ナチオスだった。
しかし、いざ憎々しい巨魁と対峙してみたものの、マットと誓った不殺によって、手を出すことはできない。それとも、その契りを破ってでも、目の前の悪魔を倒すべきなのか。次の動作を迷っている内に、フィスクはこれまで集め続けたヒーローたちの情報、その中でもエレクトラに関するファイルを開示する。
いまだに彼女は、古巣である秘密結社ハンドとの繋がりを断ち切れず、"オリジナル・デアデビル"の勧誘を図っている。もしこの情報が知られたら、エレクトラとマットの関係はどうなるか。話を聞かされた女暗殺者は、気づけば犯罪王のオフィスを飛び出していた。
DDWWF- (3)デアデビルたちの結束を崩せば、ヒーロー軍団も瓦解する。
さらなる確証を得るため、フィスクが送り込んだ"ハンター"。エレクトラとクレイヴンのチェイスが始まる。





<もっとも危険で、もっとも弱く>
かつての凶悪性を押し殺すように、恋人との約束を尊重。なぜならそうすることで、エレクトラはもっとマットとデアデビルの二人に近づけるから。
敬虔なキリスト教徒である彼は、己を律することで、正義となる。自分にも悪人にも厳しくある者こそ、デアデビルというヒーロー。彼の鋼の意志は、大学時代の友人たちが、いまだ語り草にするほど。
そのギチギチに練り上げられた拘束具は、あまりに危険で、あまりに脆い。でも、だからこそ彼は強い
DDWWF- (4)恋人だけが知る、鉄の男がひた隠す情念。
その激しさに女が思い出すのは、別の激情。



数々の戦いと、燃えるような愛情を経て、エレクトラは男のことをよく知っています。だから彼女は、極めて近しい存在になることで、彼をもっとよく知り、その助けになれると考える。
だのに、"まだハンドとの繋がりを断ち切れていない"となれば、こういった積み重ねが崩れ去ってしまう。フィスクの語りを前にして、エレクトラは顔色を変えました。
もちろん今の彼女が、自分からハンドにコンタクトするようなことはありません。しかしかの忍者カルトは、心に闇を抱えるエレクトラが堕ち、マットが道連れになる瞬間を待っている。
これを彼女自身、決して否定できないからこそ、ウィルソン・フィスクの言にも動揺してしまうのでしょう。
DDWWF- (5)あまりに冷たい、暗殺者の過去。
それは、正義の心を宿そうと、赤き衣を身に纏おうと、溶けはしない。





重く伸し掛かる苦悩を表すかのように、エレクトラには幼少期がフラッシュバック。ハンドの刺客として育てられ、当然10代の少女としてなど扱ってもらえない。不要になれば捨てられると怯え、血反吐を吐く毎日。使命や任務に拘る彼女の性格は、この期間で形成されました。
そして、目の前には…彼女の記憶から抜け出してきたかのように、アカという女性の姿が。体術や武器の使い方と言った基礎を"センセー"に学んだエレクトラに、今度はニンジャの精神性を叩き込んだ人物。
命を奪うことを躊躇えば、それが自分の命取り。敗北者を狩ることは、何ら罪ではない。むしろ、彼らを死出の旅路へと送ることは、解放なのだ。
DDWWF- (6)人を襲い、殺める際に、余計な感情や音は不必要。
"凪"。それこそが、我々ハンドには求められる。



そうして出来上がった、"闇世界随一の女暗殺者エレクトラ"。なに、今赤い仮面を被っているのは、気の迷いに過ぎない。いずれ、堕ちる時がやって来る。あるいは、正義として生きる今と、血塗られた過去との矛盾に耐え切れず、死という自由へ逃げ込む時が来るだろう。
いずれにせよ、ハンドとしては待てばいい。"オリジナル・デアデビル"マット・マードックを誘惑するのは、それから。
どうやらフィスクが情報を得、クレイヴンを追手に選んだのも、彼女たちの差し金。狩人との死闘に身を投じれば、嫌が応にもハンドの一員として鍛えられた、ハンターの本能が蘇って来るのだから。
DDWWF- (7)何度愛し合おうと、どれだけ愛し合おうと、心には常に"枷"。私は、闇に生きる者?
クレイヴンにもアカにも見抜かれる迷いは、エレクトラの首を絞めていく。





二重三重に張り巡らされたに、追い詰められる新デアデビル。…ところが、やがて読者は、彼女の顔に一定の余裕があることに気づきます。
ハンドとの関係性。"全て"が知られれば、マットとの信頼が崩れ去る。ただそれは、ヴィランたちの想定。では、エレクトラが自ら、"全て"をマットに話していたら?
フィスクやアカの想像以上に、深く深く愛し合っていたWデアデビル。今のマットが自分を拒絶するはずがないと、エレクトラには分かっている。むしろ、デアデビルの名を相乗りしているのに、秘密を抱える理由があろうか。素顔を隠す鬼だからこそ、鬼同士に隠し事はない。

期待通り、マットは彼なりのヒーロー観を持って、エレクトラを迎え入れました。デアデビル/マット・マードックの人生、それは決して、他人様に誇れるようなものではなかった。取り返しの付かないミスを犯し、逃げ出したくなったこともある。
それでも彼は、そういったを悔い、贖罪のために舞い戻って来た。盲目の弁護士は、再び鬼の仮面を手に取った。そうして彼は今日まで、間近に迫るフィスクとの決戦まで、戦ってこられた。
全てのヒーローと名乗る者が、必ずしもこうある必要はないでしょう。ただエレクトラが過ちについて思うところがあるのなら、少しだけマットの話を頭に入れておいて欲しい。
DDWWF- (8)今こうして共にいるのも、罪の意識と悔い改める心があればこそ。
そうした感情を持てることを、どうして恥じ入る必要があるだあろう。





この話、おそらく彼女の勇気や決意になったとか、そういった類のものではないと思います。むしろ彼女は、そう力説する彼の姿に弱さを見た。
あまりにも脆い人の身体に、神への信仰で武装して戦わざるをえない、哀しき男。恐れに満ちた暗闇を振り払い、恐れを知らぬ男として戦う、一個人。それが、エレクトラの愛するマット・マードック。
彼は、あまりに強い。だからこそ、今選んだこの道、もう一人のデアデビルとして共にありたい。クレイヴンやアカの包囲網を潜り抜けるのに、これは十分すぎる理由でした。
DDWWF- (9)過去があるから、今がある。
せめてこの仮面を被っている間は、正々堂々とデアデビルであろう。



女暗殺者による、"恋人への信仰"。その極めつけが、【Devil's Reign】の最終局面とリンクする部分。彼女は、マットが死んだというニュースを聞かされます。そして、悲しみに暮れる街を直視します。
その様子を見て、エレクトラはすぐに察しました。これは、彼お得意の偽装だ。次なる戦いに向かうため、またあの男は闇に潜る決意をしたのだ。
すぐさま真意を読み取り、またもパートナーの弱さと強さを同時に見てしまった物語の主人公が、どんな表情を浮かべるのか。おそらく全3話のミニシリーズ、最大の見せ場がここ。
DDWWF- (10)あまりに美しく、あまりに愚かな、私の愛しい人。
彼の真意を悟るにも、これからの行動を決めるにも、時間はいらなかった。





誌的な表現を繰り返し、エレクトラの心情と、彼女の目線を通したマットのキャラクターを徹底的に掘り下げる。イベント本編以上に、実力派ライターChip Zdarskyの手腕が発揮されたシリーズだと私は感じました。
…ただその分、登場人物の表情や機微を読み取るのが難しい!(そして、楽しい!)派手なアクションは少な目ですが、【Devil's Reign】の世界観を掘り下げるには、必読の一冊です!
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Author:早坂よもぎ

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